WHOOP: ハーバード発のスタートアップからフィットネス・テクノロジーの雄へ

アスリートがテクノロジーを活用したパフォーマンス向上など考えもしていなかった頃、ハーバード大学の学生だったウィル アハメドとジョン カポディルポは、プロスポーツ選手と大学生アスリートの両方を対象とした、革新的な生理学的モニタリングのアイデアを温めていました。彼らが創り出したWHOOPは現在、NFLのアメフト選手からオリンピック選手、PGAツアーに参加するプロゴルファー、そして急速に増加している一般ユーザーや週末限定のアスリートにもトレーニングで使用され、世界的現象となっています。

WHOOP

全く新しいテクノロジー

WHOOPの創業者2人は、全く新しいテクノロジーを活用したデバイスを生み出すために、開発の初期段階から優れた専門知識を持つパートナーを探していました。そこで彼らはケンブリッジコンサルタンツと協働し、コンパクトで付け心地が良く、常に装着していられるこれまでにない心臓機能モニターを開発しました。

課題

継続的な生理学的モニタリング

アハメドとカポディルポが掲げた、次世代のウェアラブル・テクノロジー開発というビジョンのベースとなったのが、熱心に打ち込んだ大学スポーツでした。それぞれ、大学のスカッシュチームのキャプテンと重量挙げ選手だった2人にとって、2011年に普及していた万歩計型のフィットネストラッカーは使いたくなるものではありませんでした。2人が思い描いていたのは、継続的な生理学的モニタリングという可能性を引き出すこと、つまりアスリートの体力回復度や睡眠パターン、運動負荷、その他の日常活動を測定するシステムを開発するという、より高度なビジョンでした。

私はチーム内でも最高レベルの選手の1人でしたが、オーバーワーク寸前でした。そこで、体の疲労度を測定することでコンディションを保つ方法はないかと考えるようになりました。

私はチーム内でも最高レベルの選手の1人でしたが、オーバーワーク寸前でした。そこで、体の疲労度を測定することでコンディションを保つ方法はないかと考えるようになりました。

ウィル アハメド、CEO(CNBCのインタビューより)

WHOOP

「常時装着」可能

コンディションを保つためのより有益なデータや知見があれば、アスリートはオーバートレーニングという過酷で非生産的な体験をすることなく最適なトレーニングができると考えられました。さらに、生理学的モニタリングという観点からWHOOPの創業者2人がこだわったのが、「24時間365日のモニタリング」と「常時装着」可能という2点でした。

しかしながらアスリートがチェストストラップや同様の大きな機器を装着せずに、心拍数を正確に常時モニターする方法は存在しませんでした。

彼らのアイデアはこれまで商品化されていなかった新たな技術的課題を生み出したのです。

光電式容積脈波記録法(PPG: Photoplethysmography、フォトプレチィスモグラフィ)の限界への挑戦

光電式容積脈波記録法はWHOOPがBobo Analyticsとして起業した2011年にはまだ学術的研究分野に過ぎず、この技術を活用した製品は市場に存在しませんでした。加速度計をベースにした手首装着型デバイスは製品化されていたものの、歩数と単純な距離や時間を表示することしかできませんでした。アスリートが心拍数をモニタリングするためには、これらのデバイスに加えて不格好なチェストストラップを装着する必要があったのです。

潜在投資家へのアピール

アスリートが必要とするあらゆるセンサーを搭載し、24時間365日装着可能で、バッテリー寿命も長い手首装着型デバイスを開発するために、WHOOPはケンブリッジコンサルタンツをパートナーに選びました。そこで弊社は、医療機器に関する世界最高水準の専門知識、センサー設計、信号処理、アルゴリズム設計に関する幅広い能力、生体組織内での光伝搬をモデル化する能力をもってこれに応えたのです。WHOOPとの密接な協働を通じて、ケンブリッジコンサルタンツはもっとも実現可能性が高いものを見つけるべく様々な心拍数検出テクノロジーを研究しました。中でも、設計プロセスを速めることで実用レベルの試作品を短期間で作り上げ、潜在投資家にアピールできたことは大きな意味を持ちました。
2021年8月にはソフトバンクグループ傘下のビジョン・ファンド2が主導となり、WHOOPに2億ドルの投資を実施しました。

非常に洗練されたデザイン

WHOOPはアスリートのパフォーマンス向上をサポートするうえで測定の精度を最重視していました。激しい運動時の心拍数の正確な測定と心拍変動(HRV)の計算を通じて、システムに必要な各種指標を導出することが、プロジェクト成功のカギとなりました。さらに、「常時装着」というコンセプトを実現させるための非常に洗練されたデザインと長いバッテリー寿命というこだわりが、この挑戦をより難易度の高いものにしていました。WHOOP以前には、手首でのHRV測定を実現した製品は存在しませんでした。WHOOPはパフォーマンスを少しでも向上させたいアスリートにとって重要な要素である睡眠、活動量、体力回復度を測定できるHRVを活用した先駆的製品なのです。

次世代のテクノロジーを開発し、人間のパフォーマンスを引き出すことをミッションとするWHOOPのサポートはこれまでにない経験であり、携われたことを誇りに思っています。

エリック コーエン/コンシューマー・ビジネス担当SVP

ケンブリッジコンサルタンツ

必要不可欠なソリューション

高感度の専用センサー

技術的には、心拍信号は1回の心拍毎に発生する皮膚の色の微細な変動から測定されます。この変動は人間の目には見えず、その感知には特殊なセンサーが必要となります。変動は非常に微妙なため、わずかな体の動きによってもアーチファクト(人為的な間違い)が発生し、正確な心拍数検出を損なうおそれがあります。激しい運動時の心拍数を測定するという目的のためには、この問題を解決するソリューションが不可欠でした。そこでケンブリッジコンサルタンツの専門家で構成されたチームは、最終的に選ばれたアプローチである光電式容積脈波記録法(PPG)をはじめとして、多くの既存および最新のテクノロジーを研究しました。

機械学習アルゴリズム

センサー単体ではこの技術的課題を解決できず、アスリートの動きから心拍信号と信号雑音を区別するためには信号処理に関するさらなる理解が必要なことが明らかになりました。そこで概念実証として、ケンブリッジコンサルタンツは人体組織と光特性のモデリングにより、(アスリートの動きがもたらす)雑音を軽減し心拍数データを取り出す機械学習モデルを開発しました。

複合的な信号処理

最初の試作品開発では、チームは様々なセンサー構成を検証し光学系を最適化することで、複合的な信号処理と機械学習アルゴリズムを駆使してセンサーデータから正確かつ信頼のおける心拍信号を抽出できることを実証しました。従来のコンシューマー製品には搭載されていなかった特殊なアルゴリズムが、WHOOPに強固な基盤をもたらしました。WHOOPの成功は、医用分野に特化した専門的な機械学習と信号処理なしにはあり得ませんでした。

初の商用プロダクト

WHOOP開発初期においてケンブリッジコンサルタンツは、同ブランド初の商用プロダクトの開発に貢献しました。そして、WHOOPは心拍数、心拍変動、動作、体温を測定し、それらを活用して睡眠や身体的負荷と回復度を算出する軽量で常時装着可能なウェアラブルシステムとして発売されました。

WHOOPは心拍数、心拍変動、アスリートの動きを監視する業界最先端の技術により、(1)どの程度の負荷の運動が適切かを知らせる回復スコア、(2)トレーニングによりかかった負荷を示す負荷スコア、(3)総睡眠時間やレム睡眠・浅い睡眠・深い睡眠の時間などの指標を含む睡眠分析、の3つの重要な指標を提供します。

睡眠トラッキングの代表的手法である睡眠ポリグラフ検査と比較すると、心拍数、心拍変動、深い睡眠やレム睡眠(夢見睡眠)などの睡眠ステージの測定という点でWHOOPの精度は卓越していました。

サイラム パルタサラティ博士、MD、内科教授(PR Newswireリリースから引用)

アリゾナ・カレッジ・オブ・メディスン

WHOOP 4.0の誕生

観察、共有、コンディショニング

単なるハードウェアではないこのリストバンドは、ユーザーから収集したあらゆるデータを、ペアリングしているスマートフォンからウェブサイトへとワイヤレスで送信し、ユーザーはどこにいてもデータを確認することができます。WHOOPのアプリを使うことで、アスリートは自身の健康状態を観察し、チームメイトやコーチと情報を共有し、他のユーザーと競い合うことで、より優れたコンディショニングが可能となります。

2021年8月、WHOOPはさらに2億ドルの資金調達を行い、センサーを衣類に装着できるWHOOP 4.0を発売しました。学生から起業家に転身したウィル アハメドとジョン カポディルポは、「人間のパフォーマンス向上」というミッションを掲げ、これまでにないプロダクトを見事に創り上げました。

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