農業の将来はバイオ製剤にあり、ただしコラボレーションが必須

作者 ニール モトラム | 2023年3月29日

7年前にWorld Agri-Tech Innovation Summitに参加したときには、参加者は500人ほどでした。今年のイベントに参加するためサンフランシスコに降り立ってみると、2,500人ほどの農業生産者、ビジネスリーダー、先進技術の研究者、発明家などが参加するということが分かりました。いまや、世界中の農業技術エコシステムにとっての集いの場として活況を呈しているのです。これまでのような課題も残っているのですが。世の中を変えるようなバイオ製剤やバイオ燃料の可能性が視界に入ってきてはいますが、大きな変化を実現しようとすれば他業種との協業がまだ必要です。

本稿でのテーマは、とにかく結集して不言実行すべきということなのですが、このテーマは Chuck MagroのCEOである コルテバ・アグリサイエンス氏による初日の基調講演に参加してすぐに浮かんできました。そこでは、サステナブルな燃料についての先進的取り組みや、農業がグリーンエネルギー転換で中心に立つことの必要性についての話がありました。

この基調講演では、再生可能燃料に関するコルテバ・アグリサイエンス、ブンゲ、シェブロンの協業におけるナタネの役割に触れていました。例えばデータ共有のような重要分野などで、産業分野をまたがる協業を進めることが必要だという議論がありました。バイオ製剤は、10~15年間のうちに金額ベースで穀物向け農薬市場の25%にも達すると予測されていますが、事業的な利点を手中に収め、環境に優しくしようとするならば、時間を無駄にしている猶予はありません。

バイエルやシンジェンタなど、種子や化学薬品の大企業の出席者は大勢いましたが、装置や機械産業からの参加は比較的少数でした。これを見て、協業における潜在的な分断について考え込むことになったのですが、セッションやロビーでの議論では、バイオ製剤の生産拡大だけでなく、その適用(散布)方法についても拡大が必要だという意見も多く、真に開花させるにはその両面から協調して進めることが必要なのです。

バイオ製剤肥料と殺虫剤

次世代のバイオ製剤による肥料、殺菌剤、除草剤、殺虫剤という新しいパラダイムは、当然ながら、未来の話だと見られています。法規制の観点や、EUでの欧州グリーンディールのようなイニシアチブに伴う情勢から見て、旧来の合成化学製品は徐々に過去のものとみなされるようになっています。しかし、複雑な高分子の製品を市場に向けて大規模に届けるという課題は、複雑でコストがかかるものです。

実際のところ、現在のバイオ製剤製品の多くは高価で、その生産に必要なバイオリアクター技術の最適化にも多大な取り組みが必要です。大規模なバイオ事業の立ち上げに関して、バイオエンジニアリングはよく理解されていても、バイオプロセスの方の理解は不足しています。ケンブリッジコンサルタンツでは、AIがこの両方で大きな役割を果たすことに注目しています。形質選択や育種の分野ではインシリコ(コンピューターでの生物系シミュレーション)として十分に活用されているものの、プロセスや生産に上手く適用された実例はあまりありません。

産業間での協業をさらに促進すれば、旧式のバイオリアクターの設計を革新することもできるはずです。現状のものはコスト競争力がなく、単純な形では大規模化できません。バイオリアクターのメーカーは、数値流体力学(CFD)やエンジニアリングの基本の域を超えるようなソリューションで革新を起こすことが必要です。私見では、本当に技術レベルを向上させるためには、機器、センサー、AIの可能性を巡る相互作用について、もっと盛んな議論が必要です。

バイオ製剤の精密散布

このテーマに沿って話題を進めると、バイオ製剤を利用した農業用製品には精密散布が欠かせず、運搬システムが鍵となります。散布用のノズルには生きた微生物には適していないものがありますが、これは主にせん断速度と圧力が要因です。本質的に、生物は化学的なものよりも繊細にできているのです。問題となるのは、もしバイオ製剤に化学製品と同じように物理的なストレスをかけると、破裂して死に至ることが十分にありえるということです。ここで協業の話に思い至ります。バイオ製剤に将来があるとすれば、それを製品として作る企業と、その使用のためのキットを作る企業の間での共同作業が必要となります。そして、World Agri-Techで明らかになった通り、そうした協業は十分には行われていません。

この状況は、農産品販売者との協業不足にも起因しているのですが、これは市場へのチャンネルを重視していないという、これまでも何度も繰り返されてきたテーマです。今年のWorld Agri-Tech Summitの先には、挑戦しがいのある領域を見ることができ、大きな希望を持ちました。それは、技術のための技術に行き詰まることは避けられるということです。ビジネスモデルと市場へのチャンネルに重点を置いて革新を形作ることが、進歩と事業的な成功につながる鍵となります。このトピックについてご質問等ございましたら、ぜひお気軽に お問い合わせ ください。

この状況は、農産品販売者との協業不足にも起因しているのですが、これは市場へのチャンネルを重視していないという、これまでも何度も繰り返されてきたテーマです。今年のWorld Agri-Tech Summitの先には、挑戦しがいのある領域を見ることができ、大きな希望を持ちました。それは、技術のための技術に行き詰まることは避けられるということです。ビジネスモデルと市場へのチャンネルに重点を置いて革新を形作ることが、進歩と事業的な成功につながる鍵となります。

でも何度も繰り返されてきたテーマです。今年のWorld Agri-Tech Summitの先には、挑戦しがいのある領域を見ることができ、大きな希望を持ちました。それは、技術のための技術に行き詰まることは避けられるということです。ビジネスモデルと市場へのチャンネルに重点を置いて革新を形作ることが、進歩と事業的な成功につながる鍵となります。このトピックについてご質問等ございましたら、ぜひお気軽に メール ください。

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