ドラッグデリバリーインプラントの小型化が破壊的イノベーションの扉を開く

作者 ハリー ムーアマン | 2023年7月28日

埋め込み型ドラッグデリバリーは、イノベーションと商業的成長の機が熟した分野です。成熟した技術がドラッグデリバリーを改善する新たな方法を提供している現在においても、多くのアンメットニーズが皮肉にも解決策を待っている状態なのです。このような市場停滞の背景から、ケンブリッジコンサルタンツの多分野にわたるチームは、 「ファルコン」と名付けた、(1)小型のデリバリーインプラントと、(2)患者自身が家庭で薬剤をインプラントへ充填できるな充填装置からなるコンセプトに取り組んでいます。これはエンジニアリングとデザインのイノベーションにおいて、画期的なブレークスルーになるかもしれません。

ファルコンは、薬剤を放出するインプラントであり、患者や医療従事者が直感的に充填できる充填装置で構成されています。小型化されたインプラントは数十年前に腹部移植専用に設計された従来品よりも小さいため、患者の解剖学的に届きにくい部位にも配置可能です。そのため、より多岐にわたる病状に対する幅広い治療や、臓器への直接投与の道を開くことができます。インプラントーは既存製品より小さいため、定期的な薬剤充填が必要です。従って洗練された安全で使いやすいソリューションが必要となります。

この小型化と精密技術における2つのブレークスルーにより、バイオ医薬品業界は、より多くの患者群に新たな治療分野で様々な選択肢を提供できます。これはエキサイティングで画期的なことです。私はこの課題に挑んだデザイナー、科学者、エンジニアからなる 多分野のチームを率いることができて、感激しました。

この仕事の多くは、同僚のハーシャル シャーの次世代のドラッグデリバリーに関するビジョンからインスピレーションを得ました。 アクティブインプラント に関する記事では、小型化の技術的課題を克服する主な方法や、標的治療デバイスの多くの利点などを説明しています。

小型インプラントには、長期の薬剤投与だけでなく、個別管理、患者と介護者の安全性、薬物動態学的、薬力学的プロファイルが頻回注射と比較してより緩やかになるといった投薬に特化した様々な機能を有します。

ドラッグデリバリーシステムのコンセプト

私たちのコンセプト開発は、現在のドラッグデリバリーインプラントを見直すことから始めました。インプラントは非常に大きいため、配置する場所は通常患者の腹腔に限られていました。従って臓器への直接投与を必要とする治療法には不適切でした。

前述したように、小型インプラントは配置という重要な課題は解決できますが、患者の負担や安全面性を危険にさらすことなく、より小さな薬剤リザーバーをより頻繫に充填するという更なる難題を引き起こしました。現在、インプラントは医療従事者によって薬剤を充填しています。充填の頻度が増えることで、介護サービスへの負担が増えるかもしれません。

従って、患者自身や介護者が体内にあるインプラントの位置を正確に特定し、自身で薬剤を充填するための外部スマートデバイスが必要でした。当初から、患者にとっての使いやすさと権限移譲(医療従事者に代わって患者自身がデバイスを使用する)という概念は、私たちの議題の上位にありました。

プロジェクトの初期段階から、私たちはユーザビリティに関する数多くの課題を特定しました。届きにくい場所に配置された小型インプラントは体内で移動しやすくなります。患者にとって、インプラントの位置を正確に特定し、皮膚バリアを通してインプラントに薬剤を補充することは、介助や訓練無しには不可能です。

再利用可能なインプラント充填システム

このコンセプトシステムは、インプラント、使い捨て薬剤カードリッジ、再利用可能な充填装置によって構成されます。現在のインプラントは薬剤を手動で充填しています。インプラントを手で見つけ、手動で注入するという骨の折れる作業が必要なためです。現時点でのインプラントは、そのサイズにより、は6~12ヶ月ごとに充填が必要なため、手動充填は道理にかなっています。この作業を最も難しくしているのはインプラントの位置の特定です。

小型インプラントはリザーバーが小さいため、ファルコンインプラントの場合、4~8週間で補充を行う必要があります。従って、手動充填は患者の負担や医療サービスのコストが増大するため、この方法は適切ではありません。ケンブリッジコンサルタンツでは、超音波センシングを利用して、三角測量により3次元空間内でインプラントの位置を正確に特定するコンセプトを設計しました。インプラントの位置が特定されると、デバイスは触覚、音声、視覚フィードバックを活用して、患者が直感的に充填装置をインプラント上に移動させるように誘導します。

医療のイノベーションの未来を変える

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充填装置がインプラントの上に配置されると、電磁システムによって薬剤カードリッジの微調整が可能になり、針がインプラントポートの中心に正確に位置決めされます。この自動操作の間、デバイスは再利用可能な接着剤によって固定され、患者にとって物理的なサポートと安定感が加わります。ケンブリッジコンサルタンツは、患者や介護者が自宅でこの工程を実行することができ、おそらく医療専門家が定期的にそれをチェックすることができると確信しています。

ユーザーエクスペリエンスの向上

私たちのコンセプトが患者にとって非常に簡単かつ直感的になるのはなぜでしょうか?この充填装置は患者の手のひらで感じることができる触覚ユーザーインターフェースを上面に備えています。この機能はインプラントの位置に対して充填装置を動かす方向を伝達することができます。また指向性のある光と振動パルスによって、ユーザーエクスペリエンス(使用感)は更に向上します。正確に充填装置を配置すると音声信号が発生し、患者はより確信を持つことができます。

システムの心臓部には、最先端の超音波センシング技術が採用されています。充填装置をインプラント上に配置すると、放出された超音波がインプラントで反射して装置内のセンサーで受信されます。この情報はインプラントの位置と方向を正確に三角測量するために使用されます。

電気機械システムにより、薬剤カードリッジは360度回転し、最大24度傾けることができます。この機能により、充填針がインプラントポートに正確に合うことを保証するのに十分な可動領域を確保できます。カートリッジの角度と傾きはポートの中心に合うように微調整されるため、患者は難しい自己注射の心配から解放されます。注射中に残留していた薬剤がインプラントから洗い流され、新しい30日分の薬剤が充填されます。

要約すると、私たちは小型アクティブインプラントのイノベーションが、メドテックの次の大きな機会になると確信しています。ファルコンのようなプラットフォームは、バイオ医薬品企業が既存のアプローチでは不可能であった困難な治療法を提供するための革新的な扉を開くことができます。重要な課題は、小型化をどこまで推し進められるか、困難な治療を行うための柔軟性をどこまで追及できるかということです。このトピックについてご質問等ございましたら、ぜひお気軽に お問い合わせ ください。

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